アニメ映画感想 竜とそばかすの姫 細田守作品

【※ネタバレ有り】竜とそばかすの姫 を観てきた感想、考察

2021年8月13日

竜とそばかすの姫 (角川文庫) より

どうも皆さんこんにちは。管理人の本城あおいです。

今回は、2021年夏に公開を迎えた、細田守監督最新作【竜とそばかすの姫】の感想と考察を、ぜひ皆さんと共有するための記事となっております。

もう映画を見終わった方、どんな映画か気になっているが見る予定はない、といった方など幅広く楽しめる記事となっております。
ただここから先はかなりの

 

ネタバレ

 

を含んでいるので「今後見る予定で、少しの情報も入れたくない」という方は今すぐブラウザバックをお願いいたします。

 

一応記事を見る前に注意点を↓

  • 最後までかなりのネタバレ有りです。
  • あくまで個人の1感想であり、作品の名誉や出演者を否定、攻撃や批判する記事ではございません。
  • 筆者は細田守監督の作品「ぼくらのウォーゲーム」から「竜とそばかすの姫」まで全ての作品を見るほどの【細田守ファン】です。
  • 今回は作品に対する感想なので声優さんには触れません。別記事で扱う予定です。

 

以上の注意点を御理解の上、本記事を見ていただくようお願いいたします。

あらすじ

映画『竜とそばかすの姫』公式サイトより

ベルの歌声は世界を変える――

高知の田舎に住む女子高校生・内藤鈴(すず)は、幼い頃に母を事故で亡くし、父と二人暮らし。
母と一緒に歌うことが何よりも大好きだったすずは、その死をきっかけに歌うことができなくなっていた。

ある日、親友に誘われ、インターネット上の仮想世界<U(ユー)>に参加することに。<U>では、「As(アズ)」と呼ばれる自分の分身を作り、まったく別の人生を生きることができる。歌えないはずのすずだったが、「ベル」と名付けたAsとしては自然と歌うことができた。ベルの歌は瞬く間に話題となり、歌姫として世界中の人気者になっていく。

数億のAsが集うベルの大規模コンサートの日。突如、轟音とともにベルの前に現れたのは、「竜」と呼ばれる謎の存在だった。乱暴で傲慢な竜によりコンサートは無茶苦茶に。そんな竜が抱える大きな傷の秘密を知りたいと近づくベル。一方、竜もまた、ベルの優しい歌声に少しずつ心を開いていく。

やがて世界中で巻き起こる、竜の正体探しアンベイル
<U>の秩序を乱すものとして、正義を名乗るAsたちは竜を執拗に追いかけ始める。<U>と現実世界の双方で誹謗中傷があふれ、竜を二つの世界から排除しようという動きが加速する中、ベルは竜を探し出しその心を救いたいと願うが――。

現実世界の片隅に生きるすずの声は、たった一人の「誰か」に届くのか。
二つの世界がひとつになる時、奇跡が生まれる。

映画『竜とそばかすの姫』公式サイトのストーリーより引用
https://ryu-to-sobakasu-no-hime.jp/story/

 

といった内容です。

かなり簡潔に言うと

主人公が電脳世界で歌で有名になり、竜と呼ばれるユーザーと心を通わせながらネットとリアルで、頑張って問題を解決し、成長していく

ということです。

だいぶざっくりいっちゃいました。

 

 

全体的な評価、感想

Google検索「竜とそばかすの姫」より

それでは、細田守作品を愛し「時をかける少女」なんか毎年夏がくるたびに見直すこと10回以上。これまでの全ての作品を観てきた1ファンとして、「竜とそばかすの姫」の感想を言わせていただきます。

 

結論から正直に言います。

 

 

あんまり面白くなかったです!!

 

 

そう思った理由は以下の通りです。

  • 色々やりたいことを詰め込みすぎて主線がなんなのか分かりづらい
  • 登場人物の役割が薄い
  • 突っ込みどころが多すぎるストーリーで感情移入できない
  • PR、広告で触れ込んでいる内容との乖離

 

と、まあざっくりと全体的にはこんな感じです。

では、良いところと悪いところ、それぞれ詳しく見ていきましょう。

 

微妙だった、よくわからなかった点

竜とそばかすの姫 (角川つばさ文庫)より

以下にまとめてみましたが、書き過ぎました・・・。

雰囲気で見ていただけると幸いです。

  • やりたいことを詰め込みすぎている
  • 結局何を伝えたかったのか、物語の主線がなんだったのかわからない
  • 登場人物の役割が薄い
  • 歌と映像での感動のゴリ押し
  • 美女と野獣のオマージュかと思いきや、入れただけ感
  • 高知から東京まで女子高生一人で行かせる周りの大人達、そして日帰りで帰ってくるすず
  • 主人公に殴りかかろうとする「竜」の父親が謎の気迫で逃げ出すシーン
  • 「U」の世界を使って最後の問題を打開するかと思いきや、最終的にマンパワー
  • 「これが好きなんだろう?」というかのごとく見せられる「雲と空」「河川敷」の絵

 

全てを掘り下げると10000文字を超えてしまいそうなので、特に「これは・・・」と思った点だけ扱わせていただきます。

 

 

色々詰め込みすぎた結果、物語の主線が何なのかわからない

今作はとにかくいろいろな要素が詰め込まれすぎていて、最後に見終わったあと

 

・・・うん。で結局何がしたかったの?

 

となりました。

ただ単に私の理解力がないだけ、と言われてしまえばそれまでですが

【母の死、歌、電脳世界「U」、悲惨な人間関係、恋愛、田舎のきれいな風景、美女と野獣、謎の「竜」、現実世界と仮想世界、葛藤、自己犠牲】

これだけの要素を2時間の作品に詰め込むのは無謀だったと思います。

この要素を全部メインのように扱って物語を強制的に進行させていくので、私は見ている途中で「自分は何を見せられているんだろう」と冷めてしまったわけです。

 

ただ結局の所、細田守監督が描きたかったであろう主線は

幼い頃に他人の子供を助けるために死んでしまった母。
その気持ちがずっとわからずトラウマを抱えていた主人公が、現実で出会ったことのない他人とも言える竜(2人の少年)をなりふり構わず助けることで、あの時の母の気持ちを理解し、自分なりの答えを持って前を向いて行きていく

 

これなんだろうと思います。というかこれしか無いです。

 

主人公すずが過去から立ち直って前を向いて行きていく過程を描いた作品なんです。

 

他の要素(歌、電脳世界、竜など)はメインビジュアルで描かれているけれども、あくまでサブ要素でしかありません。

しかし、細田守監督はやりたいこと、入れたいこと全部ぶち込んだ結果、結局なにを伝えたかったのかわからない作品になってしまったと、私は感じました。

 

 

仮想現実と現実社会の境目が無くなっていく怖さも描きたかったはずなのに・・・

私は、細田守監督お得意の電脳空間の描写を使って、ネットとリアルの境目に苦悩する主人公がメインテーマだと思っていました。

が、しかし

ここも確かに描かれていたんですが、所々の描写がツッコミどころ満載でストーリーに浸ることができませんでした。

 

・幼馴染でイケメンの「しのぶくん」は、物語の鍵を握るキーパーソンかと思ったら特に重要なキャラではありませんでした

・すずが仮想世界で現実の姿を晒して(アンべイル)歌った時に現れた、謎の光の玉本当に謎のままであり

・東京まで行って、親から虐待されている竜(2人の少年)を助けるシーンは最終的に運と自力(てっきり歌で感動したUの人達が少年らを助けるために協力する熱い展開だと思っていた)

 

こんな感じで細かいところが毎シーン気になってしまい、主線をなぞりながら物語に浸ることができませんでした。

 

 

良かった、面白かった点

竜とそばかすの姫 角川アニメ絵本 (角川書店単行本)より
  • 圧倒的な映像美
  • 主人公役の中村佳穂さんの歌が上手すぎて良すぎる
  • 細田守監督のお家芸「電脳空間」の描き方は今回も健在
  • サマーウォーズからの「OZ」から引き継がれた「U」の世界観

 

ちょっと微妙だったところを書きすぎましたが、映像の美しさと歌は圧巻の一言でした。

また「U」の世界観も細田守ファンの私からすればたまらなく「久しぶりに細田守の真骨頂が見れる!!」とワクワクしたのは間違いありません。

ただ、他の要素が気になりすぎて、良いところが打ち消されてしまった感はありました。

 

 

サマーウォーズとの比較

サマーウォーズ スタンダード・エディション [Blu-ray]より

今回の作品は見る前はサマーウォーズと近いのでは?と思わせるイメージがあったので、そこにも触れておこうと思います。

 

サマーウォーズは、内気な主人公ケンジくんが周りの人たちと協力し強大な敵に立ち向かい、一度打ちのめされても、電脳世界「OZ」を通して繋がりあった世界中の人達ともう一度立ち上がり協力して世界を救う、という非常に胸が熱くなる展開が持ち味で、とてもわかりやすいお話です。

 

対して、竜とそばかすの姫は、あくまで主人公である「すず」にずっとスポットが当てられ、内面の変化を追っていく作品です。
「歌で世界を救う」というキャッチコピーの通り、自分の世界と、少年たちの世界を救う。それだけのためにその他の要素があるという作品なので、描くのが凄く難しく、視聴者も真剣に話の筋を追っていかなければ、ついていけない作品だったと言えます。

 

 

総評

SWITCH Vol.39 No.8 特集 サウンドトラック 2021 (表紙巻頭:細田守『竜とそばかすの姫』) より

とても期待し待ち望んでいた作品であっただけに、少しだけがっかりしてしまいました。

この悲しみは前作の「未来のミライ」に匹敵する悲しさです。

あの前辺りから細田守監督は評価され始め、社会的で非常に難しい要素を盛り込んだ作品を作るようになった結果、視聴者が付いてきにくい作品になってきたのではないかと、個人的に思っています。

わかっとるやろ」感を出されると見てる側は冷めてしまうので、全面に出すことはせず、ストーリーの中で少しずつ展開され明かされていくような混ぜ方をしてほしかったです。

 

「時をかける少女」の時のような感動を、もう味わうことはできないのか・・・。

 

ここ最近2作品連続で裏切られてはいますが、私の細田守作品に対する愛は変わりません。

ただお願いなので、原作をつけて、細田監督は監督業と演出、世界観の構成に集中してほしいと思っています。

 

 

というわけで、今回は以上になります。最後までご視聴いただきありがとうございました。

もしよろしければ、皆さんの好きな細田守作品をコメント欄に書いて教えていただければと思います。

私は「時をかける少女」が大好きです。

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